ospt’s diary

研究者×理学療法士×スポーツ

初学者のための英語論文執筆―最初は日本語で書き始めた方が良い3つの理由―

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英語論文執筆の専門書の多くが、英語と日本語の文法や表現方法の違いを理由に英語から書き始めることを勧めています。しかし、特に初学者*の先生にはおススメできません。

 

*ここでいう初学者とは、英語の読み書きに慣れてていない方と、論文執筆経験がほとんどない方といたします。

 

理由は下記の3つです。

  • 日本語で論理的に構築された文章(論文)が書けていない(場合が多いから)
  • 共著者の先生方が理解しきれないから
  • 英語で表現しきれない文章が出てくるから

 

1つずつ解説させて下さい。

 

1.本語で論理的に構築された文章(論文)が書けていない

論文では、著者の主張が伝わるよう、全体の構成、パラグラフ間の流れ、センテンス毎の繋がりなど、相当に注意しなければいけません。

 

「日本人だから日本語で論文を書くことは問題ないだろ・・」というのはかなり強引な解釈です。学術的な文章っぽさを演出するためにやたら複雑な述語を使ってみたり、不要な接続詞を使ってみたりすることはありがちです。

 

この問題点を、母国語以外の言語を使いながら改善していくことは相当難しいと思います。

手間が増えるかもしれませんが、まずは日本語で論文を執筆することをお勧めいたします。

 

私の場合は、2本和文論文を執筆してから、英語論文の執筆を開始いたしました。

 

2.共著者の先生方が理解しきれないから

学術的な文章は専門的な内容で、かつ過去に報告されていない新たな解析方法や結果、解釈が含まれることが多いですよね。

 

その際には、いくらその分野に精通している先生であっても、執筆者の意図が伝わりきらない場合があります。

 

今後は特に、多職種の専門家が絡む研究は増えると言われています。違う分野の先生方にもちゃんと内容を理解していただくような配慮が必要と思います。

 

私の場合は、共著者の先生方(特に医師)に執筆した論文の校閲を依頼する際には、英語版に日本語ver.も併せて送付します。

 

3. 表現できない英語がほぼかならず出てくる。

日本語で書き、共著者からの修正が終わった後に英文化を始めます。1文の日本語を2文の英文に分けることもしばしばです。その中で、ほぼかならずどのように英語で表現してよいかわからない文章が1,2文はでてきます。

 

無理やり英文化することも一つの方法かもしれませんが、その文を英文校正に依頼した時に、担当者が理解できずに誤った訳になる危険性があります。

 

そのため、まず日本語で共著者や読者に意図が伝わるような論文を書いて、その中で英語にできない表現は翻訳を依頼するという流れが良いと思います。

 

もしかしたら3番目は、英語から執筆し始めても同じように対策しているかもしれませんね。

 

まとめ

これらの3つの理由から、初めのうちは日本語での論文執筆をお勧めします。

そのまま和文論文として投稿するもよし、そこから満を持して英文化して英語論文として投稿するもよしです。

 

徐々に論文執筆に慣れてくれば、英語で書き始めることは問題ないと思います。

私は、現在は“方法・結果・図表”は英語で作成し、“背景と考察”は日本語で作成し、共著者の許可を貰ってから英文化しています。

 

もちろん、手間がかかるというご意見はごもっともかと思います。

しかし、論理的な文章を書き慣れるまでは、母国語で練習をしたほうが結果的にアクセプトまでの道のりや、次以降の論文執筆作業が早くなると思います。

 

これがすべての方に当てはまっているとは思いませんが、どうか参考になれば幸いです。